
第4回:社長借入金・その1
(承前)
1999年以降、金融機関は大きく様変わりをした。風景が一変したと言っていいだろう。ところが、このような変化にあまりにも無頓着な経営者が多いのも事実。間接金融を恃む中小零細企業にとって、金融機関との取引は非常に重要であり、その大前提となる『決算』や『決算書類』は同じく重要である。色々な場をお借りして、これらの重要性を説いている小生であるが、なかなかその重要性について遍く理解されているとは言い難い現状がある。
前回の『会計事務所的営業トーク』のお話、曰く『うちの会計事務所で決算組んだら銀行さんからお金が借りられますよ』に関して、あえて『一理ある』とコメントした。さて…
中小企業の経営者がどの程度意識しているのかいないのかは別にして、会計にもきちんとルールが存在する。中小零細企業は商法決算がメインとなるが、その形式にもきちんとルールが存在する。来年5月からは会社法が施行されるが、そこにおいても現行の商法下でのルールが引き継がれ、会社に対して、計算書類等(商法・会社法での決算書類等の名称)の作成や保存を義務づけている。
従って、ある一定の水準が担保されるであろう決算書類については、その作成協力者である会計事務所サイドが、営業トークの一環として前段のコメントをすることにも『一理』あろう。但し、これはあくまでも小生の希望的観測で、会計事務所や税理士事務所はこと会計に関してはプロフェッショナルであるといういわば『性善説』に立っている。(前回コラムでの指摘通り、金融機関の視点が著しく欠如しているのだが…)
今や、パソコンが遍く普及し、すぐれものの会計ソフトも、3万円程度の出費で手に入る。こと決算書に関しても、会計に関する知識がなくとも十分それらしい代物ができあがる。さて、その内容はというと、千差万別、玉石混淆、要するにいろいろなものがある。その表示方法も然り。きちんとルールを理解しているものから、なんじゃこりゃあ、というものまで……
さて、タイトルの『社長借入金』である。決算書類にこの科目名で登場しているのも(流石にかかる決算書を見ると、おいおい! と思わず声をかけたくなるのだが…)あれば、そうでないのもある。皆さんの会社ではかかる取引がある場合、どういう形で決算書上の表示をなさっておられるだろう???
例えば、『仮受金』、『短期借入金』、『長期借入金』『その他固定負債』等々。たかが表示の問題と思う事なかれ。何度でも繰り返すが、決算書類における『見かけ』=表示は非常に重要である。たかが表示、されど表示である。
社長借入金、内容は会社が社長からお金を借りているということ。では冷静に考えてこのような取引はどういうシチュエーションでおこるだろうか? 基本的には会社の資金繰りの一助として、社長(中小零細企業の場合は往々にしてオーナーである)からの資金提供が想定できる。
一時的なものか、あるいはそうでないのかによって扱いが異なるが、巷間散見されるのは『ある時払いの催促なし』。あきらかに金融機関等からの借入金とは趣が異なる。
ここで再度表示の問題である。作者であるべき会社が会計に関する造詣が深くない場合、往々にして会計事務所や税理士事務所に外注するわけだが、果たして、前述の営業トークの上手な会計事務所を含めて、この表示についてどれほどの意識を集中しているのか、大いに疑問がある。今まで数多くの計算書類に接した経験からそう思う。
注記(法律で要求されている補足説明)に関しても、その根拠を理解した上で、あえて注記を省略しているのか、いないのか、さっぱりわからない。どう考えてもそんなルールあるの? と言いたくなるような考え方が跋扈しているとしか思えない。
今回のケース『仮受金』などと決算書に表示(注記なし)されているケースなどは、何をか況やである。
