第7回:会社法いろいろ…個別注記表

(承前)1999年以降、金融機関は大きく様変わりをした。風景が一変したと言っていいだろう。ところが、このような変化にあまりにも無頓着な経営者が多いのも事実。間接金融を恃む中小零細企業にとって、金融機関との取引は非常に重要であり、その大前提となる『決算』や『決算書類』は同じくきわめて重要である。色々な場をお借りして、これらの重要性を説いている小生であるが、それが遍く理解されているとは言い難い現状がある…

 

 さて、実務の世界でも会社法に準拠した決算がスタートした。平成18年5月1日以後終了する事業年度つまり5月決算法人から『計算書類』も大幅に模様替え。新会社法の条文を早速確認しよう。(傍点筆者、以下同じ)

 

(会社法)
第435条(計算書類の作成及び保存) 
1 株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。(以下略)

(会社計算規則)
第91条 (各事業年度に係る計算書類)
法第435条【計算書類等の作成及び保存】第2項に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。(以下略)

 

 

会社法が要求している計算書類は4つ。

貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表

 前回紹介したとおり、「利益処分案(損失処理案)」がなくなった。5月か6月が決算期の中小法人(会計監査人の監査を受ける法人を除く)なら、確定した決算書を手にとってご覧になっていただきたい。該当する法人で、昨年と全く同じような形式で計算書類が作られているというケースは、レッドカード一発退場である。(まあ、万に一つでも、そんな計算書類はないと思うのだが…)

 

 貸借対照表と損益計算書は馴染みが深いだろう。が、その内容は結構変更されている。もし、貸借対照表に『資本の部』という記載があるなら、やはりレッドカードだ。会計事務所の変更を真剣に考えるべきかも知れない。一般的には決算事務を外部に委託している会社の場合、会計事務所から今回の新会社法についてなんらかの説明を受けていると思うのだが、いかがだろう。

 

 今、実務界で『面白い』現象が起きている。このコラムで以前指摘した旧・商法施行規則がらみの話なのだが、小生は『注記に関してもその根拠を理解した上で、あえて省略しているのか、いないのか、さっぱりわからない。どう考えてもそんなルールあるの?と言いたくなるような考え方が跋扈しているとしか思えない』と皮肉った。ところがどういうわけか、『注記』を意識する職業会計人が急増中なのだ!

 

 今回、会社法になったからといって、こと注記関連は大きな変更は加えられていない。個別注記表も、必ずしも『個別』である必要はなく、従来通り貸借対照表等の末尾に注記しても何ら問題ない。小生の事務所はこと注記に関しては、新たな法律で求められているものを除き、従来通りである。(よく、同業者から、『どうやって作るの?』という質問を頂戴するが……(*^◇^)σ……)

 

 では法人税法の影響だろうか?実は今回の会社法改正に合わせて法人税法も大改正されている。ということで条文にあたると;

 

(法人税法施行規則)
第三十五条 (確定申告書の添付書類)
法第七十四条第二項 (確定申告書の添付書類)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるものとする。
一  当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書
二  当該事業年度の株主資本等変動計算書(以下省略)
従来ルールと実質上何ら変化ない。法人税法は個別注記表を必要提出書類として要求していない。

 

 結局、『面白い』現象の原因は未だ解明できていない。注記のルールは実質かわっていないのに、世の会計事務所が急にルールに目覚めルールを意識し始めたのだろうか?小生には俄には信じられないが、もしそうなら、中小企業にとって悪い話ではない。
(尤も会社のことを考えるのなら、注記もいいけど、キャッシュ・フロー計算書の方がずっと重要だと思うのだが…)

 

つづく
松岡 宣明
松岡宣明税理士事務所 所長
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高知県出身、1961年生まれ。
京都大学経済学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て平成9年松岡宣明税理士事務所開業。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部・副支部長、高知大学人文学部・非常勤講師。
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