第10回:中小企業の会計に関する指針・その3

(承前)1999年以降、金融機関は大きく様変わりをした。風景が一変したと言っていいだろう。ところが、このような変化にあまりにも無頓着な経営者が多いのも事実。間接金融を恃む中小企業にとって、金融機関と良好な取引関係を維持することは『ライフライン』であり、その大前提となる『決算』や『計算書類』は極めて重要である。色々な場をお借りして、これらの重要性を説いている小生であるが、それが遍く理解されているとは言い難い現状がある…

 

 『会計のルール』は社会の重要なインフラストラクチャーである。『世界共通語』と言っても過言でない。漸く、我が国の中小企業にもメルクマールとなる『中小企業の会計に関する指針』が登場した。この指針は『会計参与』という機関を会社に設ける場合に強制的に準拠すべきルールとして位置づけられているが、現実問題としては、『会計参与』設置会社以外の中小企業も、積極的に会計指針に準拠した計算書類を作成すべきである。それこそが時代の要請である。

 

 さて、会社法施行からはや1年。3月決算も出揃い、新しいルールに基づく計算書類もほぼ一巡、世間にも漸く浸透してきた感がある。法人税法では作成が要求されていない『個別注記表』が、『税務会計』とかいう摩訶不思議な会計ルール(?!)の跋扈する中小企業会計の現場でも根付いてきたこと(理由は今もって不明だが…)は喜ばしい限りだ。(詳細はコラムVer.7でコメント済)

 

 

今回のテーマは『賞与引当金』
 読者の中で勤務先等の計算書類を入手できる方は、直近のものをお手元にご用意頂きたい。『貸借対照表』、『損益計算書』、『株主資本等変動計算書』そして『個別注記表』は、最低限揃っている筈だ。

 

 まず『個別注記表』の内容をご確認頂こう。
 冒頭に『この計算書類は、中小企業の会計に関する指針によって作成しています。』との記述があるだろうか?
 『YES!』の方は次のステップへ。(NOの方は、残念ながら今回のコラムとは無縁である。尤も、ほとんどの計算書類が会計ソフト等で作成されていることに鑑みれば、最新バージョンソフトを利用していれば、あらかじめ先ほどの記述は個別注記表の冒頭に記載されているものと思われる。)
 次に、『貸借対照表』の負債の部の流動負債に『賞与引当金』が計上されているかどうかをご確認頂きたい。
 いかがだろうか?きちんと計上されているだろうか?当該引当金への繰入額は法人税法上損金算入が認められていないから、『有税での引当』となり、法人税計算での加算調整や『税効果会計の適用』を検討することになるのだが…
 引当金は指針(抜粋)では以下の通りこと詳細に規定されている。(傍点筆者)

 

48.引当金の設定条件
(1)次のすべての要件に該当するものは、引当金として計上しなければならない。
@将来の特定の費用又は損失であること
A発生が当期以前の事象に起因していること
B発生の可能性が高いこと
C金額を合理的に見積ることができること
(2)引当金のうち、当期の負担に属する部分の金額を当期の費用又は損失として計上しなければならない。

 

49.引当金の区分
(1)賞与引当金等の法的債務(条件付債務)である引当金は、負債として計上しなければならない。(以下略)

 

50.表示
(1)引当金は、その計上の目的を示す適当な名称を付して記載しなければならない。

 

51.賞与引当金の計上額
(1)従業員に対する賞与
翌期に従業員に対して支給する賞与の見積額のうち、当期の負担に属する部分の金額は賞与引当金として計上しなければならない。(以下略)

 

 具体例:3月決算で毎年6月と12月に従業員にボーナスを支給している会社を考えてみよう。6月のボーナスは12月から5月までを査定対象期間として、給与規定等を根拠に支給しているものとする。つまり6月のボーナスのうち12月から3月までの4ヵ月分の金額については3月末決算時点においてその発生額を合理的に見積もることが可能であり(指針48に規定する要件を満足)賞与引当金を計上しなければならないことになる。例えば、6月支給予定分の6分の4を賞与引当金として計上するわけである。給与規定等基づき毎期賞与を支給する法人なら3月決算に限らず賞与支給対象期間等と決算時期にずれが生じている場合は、指針に準拠している限り、賞与引当金の計上は強制されることになる。(法人税法上の規定の有無とは何ら関係ない!)

 

 で、冒頭の個別注記表に話を戻して、それぞれの会社の計算書類を再度じっくりご覧頂きたい。YES! と回答された方で、自らの会社が、指針により賞与引当金の計上が強制される会社に該当するにも拘わらず、貸借対照表に賞与引当金が見あたらないとしたら…
 個別注記表の冒頭に記載されている『指針によって作成しています』とは、一体全体どういう意味なんだろう?????
 その計算書類って…(以下自粛……(^o^)ノ……)。

 

つづく
松岡 宣明
松岡宣明税理士事務所 所長
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高知県出身、1961年生まれ。
京都大学経済学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て平成9年松岡宣明税理士事務所開業。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部・副支部長、高知大学人文学部・非常勤講師。
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