第13回:租税特別措置法って???

 さて、今回はガソリン値下げ問題で話題になっている租税特別措置法(以下、措置法)を採り上げよう。本題に入る前に、いきなりクエスチョン!??

 

 以下の二つの新聞の見出し、あなたにとってインパクトがあるのは、どっち?

 

『消費税率引き下げ、5%から4%へ!』

 

『道路暫定税率期限切れ、ガソリン値下げへ!』

 

 

 実は何れの記事も、『税収』という観点からすれば、国民にとってほぼ同等のメリットがある。
『国の財布』こそ異なるが、消費税を1%下げると約2.5兆円の減税となり、揮発油税の措置法が期限切れとなると約2.6兆円の減税となる。
 結局、今回の騒動、減税規模の観点からすれば、消費税が1%減税されたと同じくらいのインパクトがあるということだ。
 そもそも『揮発油税の租税特別措置法の期限切れ』の話ではなく、『消費税の税率引き下げ』の話だったらどうだろう。マスコミの論調や、我々の受け止め方も大きく異なったはずだ。

 

 では措置法とはいったい何だろう?

 

 措置法の歴史は古く、今を去ること51年前、昭和32年3月31日法律第26号として産声を上げている。何のために作られた法律か?同法の第1条の趣旨を引用しよう。(傍点など筆者)

(趣旨)第一条  この法律は、当分の間、所得税、法人税、相続税、贈与税、地価税、登録免許税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方道路税、石油石炭税、航空機燃料税、自動車重量税、印紙税その他の内国税を軽減し、若しくは免除し、若しくは還付し、又はこれらの税に係る納税義務、課税標準若しくは税額の計算、申告書の提出期限若しくは徴収につき、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)、地価税法(平成三年法律第六十九号)、登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)、酒税法(昭和二十八年法律第六号)、たばこ税法(昭和五十九年法律第七十二号)、揮発油税法(昭和三十二年法律第五十五号)、地方道路税法(昭和三十年法律第百四号)、石油石炭税法(昭和五十三年法律第二十五号)、航空機燃料税法(昭和四十七年法律第七号)、自動車重量税法(昭和四十六年法律第八十九号)、印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)及び国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の特例を設けることについて規定するものとする

 

 頭がくらくらする。(措置法の条文は非常に長いものが多く、概ね、極めて難解である)
では租税特別措置とはなんだろうか。岩波書店の広辞苑(第六版)によると「特定の政策目的を達成するため、税制上の例外規定により行われる税の軽減・優遇措置。投資減税・特別償却など。」とされている。
 あっさり言えば、措置法には所得税や他の国税の特別法として、色々な優遇措置が盛り込まれているのである。が、優遇規定だけでないことは今回の騒動からもよくわかるだろう。現実には国民が知らない『税に関する法律』がたくさんあるということである。特別法の中身として、多くの条文が時限立法として作られていることから、この法律は、相当厄介である。
 その上、政治や経済の状況等で毎年のように何らかの条文が改正・廃止・新設されるので、その都度、措置法の条文が複雑怪奇になってきたのだ。その複雑さゆえ、実務家である我々税理士泣かせの法律でもある。

 

 もっとも今回の騒ぎで、この国のある意味『見えない部分(世間から注目されない部分)』に、マスコミ他一般の方々の関心が向けられたということは、税の世界を住処とする小生にとっては非常に嬉しいことである。
 又、少数ではあるが、措置法の『摩訶不思議な点』、特に特定の業界や利権の温床と思しき『矛盾点』にスポットライトをあてたマスコミ等があったことは心強い。
 国民には憲法第30条で『納税の義務』が課されている。同じく第84条で『租税法律主義』を謳っており、『わが国のいかなる税法も、必ず国会で法律として議決されている』ことがわかる。今回の騒動を奇貨として、今こそ措置法をじっくりと我々国民は精査する必要があるのではないだろうか???

 さて、今回期限切れとなった、この3月31日まで施行されていた措置法の条文は以下の通り。
 (お恥ずかしいことだが、揮発油税の措置法規定については、今回初めて条文を見た!)

 

(揮発油税及び地方道路税の税率の特例)
第八十九条  昭和五十四年六月一日から平成五年十一月三十日までの間に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方道路税の税額は、揮発油税法第九条及び地方道路税法第四条の規定にかかわらず、揮発油一キロリットルにつき、揮発油税にあつては四万五千六百円の税率により計算した金額とし、地方道路税にあつては八千二百円の税率により計算した金額とする。
2 平成五年十二月一日から平成二十年三月三十一日までの間に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方道路税の税額は、揮発油税法第九条及び地方道路税法第四条の規定にかかわらず、揮発油一キロリットルにつき、揮発油税にあつては四万八千六百円の税率により計算した金額とし、地方道路税にあつては五千二百円の税率により計算した金額とする。

 

 前段で多くの条文が時限立法であると言ったが、条文の赤字の部分を注目してほしい。まさに期間限定の法律であることがわかるだろう。この揮発油税等の暫定税率が現在の料率になったのは昭和54年6月1日であることがわかる。(昭和54年6月といえば、小生は地元の予備校で大学受験の浪人生活を送っていた………)

 

 『措置法という秘密のヴェールにつつまれた、様々な租税に関する特別措置が、網の目のように張り巡らされている、世の中の奥深い現実の一端が垣間見られたこと。』
 今回の騒動の教訓とはいえないだろうか。

 

 実はこのコラムのテーマであるFPビジネスと『措置法』は切っても切れない密接な関係がある。詳しくは次回解説するが、ここでひとつ質問をしてみよう。
 以下、FPが知識として必ず知っている(はずの)税法規定をいくつかピックアップしてみた。

 

【質問】この中に『措置法』の規定は、いったいいくつあるでしょうか?
1)年間110万円の贈与までは贈与税が課税されない
2)上場株式の配当金から10%の税金(7%の所得税および地方税3%)が源泉徴収される
3)長期保有(5年超)する土地等の譲渡益の税率は20%(所得税15%および地方税5%)である
4)住宅ローン控除は10年か15年のいずれかのローン控除期間を選択できる
5)預金利息から20%の税金(所得税15%および地方税5%)が源泉徴収される
6)居住用の住宅を売却しても、売却益3000万円までは税金がかからない
7) 財形貯蓄の利息には税金がかからない

 

さて、どうだろうか???

つづく
松岡 宣明
松岡宣明税理士事務所 所長
〒780‐0863 高知市与力町3番4号MAビル
TEL 088(822)8660 FAX 088(822)8662
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高知県出身、1961年生まれ。
京都大学経済学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て平成9年松岡宣明税理士事務所開業。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部・副支部長、高知大学人文学部・非常勤講師。
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