第9回:小売等役務商標の保護について

 昨年商標法の一部が改正され、平成19年4月1日から小売等役務に関する商標登録の出願の受付が開始されました。小売等役務は、小売又は卸売に伴って提供される総合的なサービス活動であり、最終的に商品の販売によって収益をあげるものです。具体的には、商品の品揃え、陳列、店員による商品の説明などが該当すると考えられています。

 

1.商標とは
 産業財産権の種類を人間にたとえると、特許や実用新案は身体の構造であり、意匠は着飾った人の容姿だといえます。では商標とは何でしょうか。商標は、人を区別するためにつけられている「名前」(文字)や、家の目印である「家紋」(図形)にたとえることができます。
 すなわち、商標とは、他人の商品・サービス業務と自己の商品や役務(サービス 商標法では有料で行われるサービスのことを「役務」といいます)を区別するためにつけるマークです。
 そして、マークには2種類あります。1つは企業名を表すハウスマーク、たとえば「ソニー」「SONY」や「サンキョー」「三共」のような商標です。もう1つは「ペットマーク」と呼ばれるもの、たとえば「ウォークマン」「Gショック」、そして役務(サービス)に付けられる商標「クロネコヤマトの宅急便」のような商標です。

 

2.商標法上の商品
 法目的、商標の定義、社会通念などから、一般には、商標法上の商品とは「取引対象として市場において流通する、ある程度量産可能な有体動産」と解されています。
○取引の対象となること
 宣伝、広告、販売促進用の物品(ノベルティ)として無償で配布されるマッチ、ちらし、ティッシュなどは、宣伝媒体にすぎず商標法上の商品には該当しません。
○流通過程にのること
 継続的に店頭で販売されているパック詰めの料理品は、商標法上の商品に該当しますが、料理店で提供され店内で飲食される料理品は、市場における流通性がなく、商標法上の商品には該当しません。ただし、「飲食物の提供」は役務として保護されます。
○ある程度量産が可能であること
 純粋美術品(絵画、彫刻)のような一品製作物は、商標法上の商品に該当しませんが、絵画や彫刻の複製物は商品に該当します。
○有体物であること
 電気、熱、光、音などの無体物は商標法上の商品に該当しません。しかし、天然ガス(気体)や鉱泉水(液体)などの有体物は、ボンベやボトルなどの容器に入れて取引できるため、商品に該当します。
○動産であること
 不動産(土地や建物)は、商標を付して流通にのせることができないため、商標法上の商品には該当しません。
 ただし、「土地の売買」「建物の売買」「建物又は土地の情報の提供」などは役務として保護されます。

 

3.商標法上の役務
 一般には、商標法上の役務とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の対象となるもの」と解されています。
○営利目的は不要
 役務(サービス)の代表例としては、広告、金融、不動産取引、建設、通信、輸送などがありますが、営利目的は必要ありません。病院、大学、学校などの役務は、たとえば、「医業」「大学における知識の教授」、「英語の学習塾における教授」などのように役務の対象となります。
○他人のために行う労務又は便益であること
 「他人のため」ですから、自社内で新入社員に行う研修活動や、家庭内で家族に対して行うサービスは、役務に該当しません。
○独立して商取引の対象となるもの
 商品の販売時に商品を包むサービスや、ガソリンスタンドにおける車の窓拭きやタイヤの空気圧チェックなどは、商品の販売の付随的サービスであって、独立して商取引の対象とはならないため、役務には該当しないと解されてきました。

 

4.小売等役務商標
 しかし、平成18年の法改正により、従来、独立して商取引の対象とはならないため保護されなかった、小売・卸売の事業者が商品販売に際して行っている顧客に対する便益の提供(品揃え、陳列、接客サービス)を第35類の役務商標として登録できるようになりました。
 これにより、小売店(食料品店、洋服店、家具店等)の看板や、ショッピングカート、レジ袋、店員の制服等に使用されているマークが役務商標として保護されることになります。

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