
第11回:知的財産戦略の進め方
最近では「知的財産戦略」や「知財戦略」といった言葉をよく耳にするようになりました。自社の経営資源や外部の経営環境を踏まえながら、知的財産の創造、保護、活用を通じて、企業の付加価値の向上や利益の確保に結びつける戦略を意味しますが、これを実行している企業はまだまだ少ないようです。今回はこれから知的財産戦略に取り組もうとされている企業を対象にその基本的な進め方や留意点を簡単に説明します。
◇人材・社内体制の整備
まずは、人材・社内体制の整備から始めましょう。経営資源の制約もあって、専任の知的財産担当者や知的財産部を置いている企業はそれほど多くありませんが、研究開発の現場で生まれる知的財産を迅速・的確に保護するためには、知的財産の専門的知識を備えた人材が必要不可欠です。四国経済産業局や日本弁理士会の主催で毎年「知的財産戦略セミナー」等の各種セミナーが開催されていますので、これらを積極的に活用して人材教育に役立てましょう。特に開発研究の現場に立つ技術部門の社員に知的財産に関する知識を得る機会を積極的に提供するのが効果的です。また、他企業の知財担当者OBを即戦力として招聘し、長年の経験に基づくノウハウを伝授してもらう等も一つの手段でしょう。
◇コア技術の明確化と選択・集中
次に、自社のコア技術を明確にして研究開発テーマの選択と集中を行いましょう。自社のコア技術や技術的優位性を客観的に認識している企業は意外と少なく、経営資源を集中的に投下すべき対象が不明確になりがちです。自社の技術・特許権・特許出願を整理・分析すると共に、特許調査を行って競合他社の特許権・特許出願の状況を把握してパテントマップを作成し、パテントマップにおける自社技術等の位置づけを明らかにして、今後の研究開発の方向性を選択し、集中的に研究開発活動を行いましょう。特許調査は、インターネットの利用環境があれば「特許電子図書館(IPDL)」を無料で利用することができます(http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)。特許庁電子図書館の具体的な利用方法がわからない場合は、発明協会高知県支部の「特許情報活用支援アドバイザー」に相談すれば親切丁寧なアドバイスを受けることができます。特許マップについては、「独立行政法人工業所有権情報・研修館」で技術分野毎のパテントマップが公表されていますので是非参考にして下さい(http://www.ryutu.inpit.go.jp/chart/tokumapf.htm#kikai)。
また、研究開発者の発明へのモチベーションを高めて知的財産を数多く生み出すためには、対価の評価方法等を定めた職務発明規定を整備することも重要です。ただ、技術の専門化・高度化・複雑化が進展する今日では、全ての技術を自社の社員のみで開発することが難しい場合もありますので、その場合は大学の教授や他企業と連携することも有効な手段の一つです。大学の技術移転の窓口であるTLOに相談したり、独立行政法人工業所有権情報・研修館の特許流通データベース等の各種データベースでの検索が効果的です。なお、大学や他の企業を連携して共同研究開発を行う場合は、将来的なトラブルを回避するために、共同研究開発の役割・費用負担・権利の帰属・秘密保持などについて定めた共同研究開発契約を締結しておくことに留意してください。
◇知的財産の効果的な保護
研究開発によって生まれた知的財産については、特許等の権利として保護するのか、ノウハウとして保持して保護するのかを検討しましょう。一般的には、製造ノウハウ等技術内容が他社に見抜かれにくく、社外に技術が流出しないような秘密保持体制が確立できている場合はノウハウとして保護し、他方、技術内容をブラックボックス化しにくく、他社による模倣行為が懸念される場合は知的財産権として保護します。ノウハウとして保護する場合は、他社に権利を取得された場合を想定して、先使用権を主張できる証拠(日付入りの製造図面や組織的な伝票管理等)を保管しておくことに留意して下さい。知的財産権として保護する場合は、将来的な他社の模倣行為を想定して、特許権であれば、将来的に権利書としての役割を果す出願書類(特許請求の範囲及び明細書)の内容が迂回技術や代替技術による他社参入を防止するために効果的な内容になっているかどうか等に留意してください。製品の外観デザインを保護する意匠権であれば、製品の基本デザインのみならずバリエーションデザインも意匠権として登録する等して、デザインの模倣が容易にできない効果的な権利になるように留意してください。
以上が知的財産戦略の基本的な内容ですが、ひとくちに知的財産戦略といっても業界や企業の個別事情に応じて様々なものが存在します。従いまして、発明協会高知県支部の無料相談会等を利用して、弁護士・弁理士などの専門家から具体的なアドバイスを受けながら知的財産戦略を進めることをお勧めします。