
第13回:商標登録の条件
平成18年に商標法の一部が改正され、平成19年4月1日から小売等役務に関する商標登録の出願の受付が開始されました。
これにより、従来、独立して商取引の対象とはならないため保護されなかった、小売店(食料品店、洋服店、家具店等)の看板やショッピングカート、レジ袋、店員の制服等に使用されているマークが役務商標として保護されることになりました。
しかし、特許庁へ商標登録出願をし、商標登録を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
1.使用と識別力が大切(商標法3条1項各号)
商標は使用されてこそ商標の機能を発揮し、使用した商標に業務上の信用が化体します。
したがって、現実に使用しておらず、将来的にも使用する予定のない商標は、保護されません。
また、商品や役務(サービス)に使用しても、需要者が何人の業務に係る商品や役務であるかを認識できない商標は、自己の業務に係る商品や役務と同業他社の商品や役務を区別する力(識別力といわれます)が有りません。
具体的には、以下の様な商標です。
○その商品・役務の慣用商標や、その商品・役務の普通名称、品質、効能、用途、産地、提供方法などを普通に用いられる方法で表示する標章
「慣用商標」とは、識別力を有していた商標が、同業者間で同種の商品・役務について普通に使用された結果、後発的に識別力を失ったもので、清酒についての「正宗」、宿泊施設の提供についての「観光ホテル」などです。
「普通名称」とは、取引界におけるその商品や役務の一般的な名称(「アルミニユウム」「塩」など)ですが、略称や俗称を含みます。略称としては「アルミ」、「損保」などがあり、俗称としては「波の花」(塩)、「おてもと」(箸)などがあります。
「品質、効能、用途、産地、提供方法など」の具体例としては、「渋谷」(産地・販売地)、「一級」(等級)、「ブルー」(色彩)、預金の受入れについての「定期」などが挙げられます。
○ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章
「ありふれた氏」には仮名文字やローマ字で表示したものが含まれ、実際の審査においては50音別電話帳に多数記載されているものがありふれているとされます。例えば、「鈴木」「山本」「KUBOTA」などです。
「ありふれた名称」には「株式会社」「KK」等のような商号が含まれ、業種名と結合したものも含まれます。例えば、「上野歯科」「モリタ株式会社」などです。
○極めて簡単で、かつ、ありふれた標章
仮名文字の1字、ローマ字の1字・2字、一本の直線、輪郭として普通に用いられる○△◇□などが該当します。原則として数字(アラビア数字)も該当します。
○需要者が何人の業務に係る商品・役務であるかを認識できない標章
例としては、「習う楽しさ 教える喜び」の様なキャッチフレーズ、現元号「平成」などです。
2.登録できない商標がたくさんある(商標法4条1項各号)
出願人が使用する商標であって、識別力を有する商標であっても、登録できないものがあります。
A.公益を害する商標
○国旗、菊花紋章、勲章、褒章、白地赤十字の標章と同一又は類似の商標
○パリ条約の同盟国の紋章、国際機関を表示する標章、地方公共団体の証明用の印章などであって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標
○国、地方公共団体、これらの機関の非営利目的の公益団体・公益事業を表示する著名な標章と同一又は類似の商標
例としては、YMCA、オリンピック、NHK、JETROなどです。
○公序良俗に反する商標
卑猥な文字や図形からなる商標、特定の国を侮辱する商標、差別的な印象を与えるような商標などは、公序良俗に反し登録されません。
○商品の品質・役務の質について消費者の誤認を生ずるおそれがある商標
日本製のウイスキーに「スコットランド」、チューインガムに「クッキー」、イタリア料理の提供に「中華料理の△△△軒」の文字を使用した場合が該当します。なお、この規定は商品の特性・役務のサービスの内容・質を誤って認識するか否かで判断されるため、品質及び質の優劣とは無関係です。
B.他人の私益を害する商標である場合
○他人の「肖像」「氏名・名称・著名な雅号・芸名・筆名・これらの著名な略称」を含む商標
当該他人の人格権を保護する規定であり、したがって、その他人の承諾があれば、この規定は適用されません。
○他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(周知商標)と同一又は類似の商標
未登録であっても、使用により業務上の信用が化体し、高い財産的価値が生ずることがあり、そのような周知商標を保護する規定です。
○先願の他人の登録商標と同一又は類似の商標
○他人の登録防護標章と同一の商標、商標権が消滅してから1年を経過していない他人の登録商標と同一又は類似の商標
○種苗法によって品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標
○他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれのある商標
例えば、滋養強壮剤として著名な「わかもと」を石鹸に使用する場合、蓄音機の前に犬が座っている図形を電気通信機械器具に使用する場合(ビクターの著名商標と出所混同を生ずるおそれがある)などです。
○日本国内または外国における他人の周知商標と同一又は類似であり、不正の目的をもって使用する商標
顧客吸引力を有する周知・著名商標への第三者のフリーライドを防止する規定です。「不正の目的」とは、外国で周知な他人の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願した場合、または、外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約の締結を強制する目的で出願した場合などです。