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第5回 「社長借入金 その2」

(承前)


 1999年以降、金融機関は大きく様変わりをした。風景が一変したと言っていいだろう。ところが、このような変化にあまりにも無頓着な経営者が多いのも事実。間接金融を恃む中小零細企業にとって、金融機関との取引は非常に重要であり、その大前提となる『決算』や『決算書類』は同じく重要である。色々な場をお借りして、これらの重要性を説いている小生であるが、それが遍く理解されているとは言い難い現状がある…


 さて、いきなりで恐縮だが、商法施行規則という法律の条文をご一読いただきたい。(傍点は筆者)


(取締役等に対する金銭債権)
第七十一条  取締役、執行役又は監査役との間の取引による取締役、執行役及び監査役に対する金銭債権は、その総額を注記しなければならない。
(取締役等に対する金銭債務)
第八十四条  取締役、執行役又は監査役との間の取引による取締役、執行役及び監査役に対する金銭債務は、その総額を注記しなければならない。
 表示科目名に拘わらず、社長貸付金や社長借入金等は、その総額を貸借対照表等の計算書類に注記しなければならない、と法律に規定されている。
 公開企業でないほとんどの中小企業の経営者なら誰でも気付くと思うのだが、『うちの会社の決算書にそんなもん、注記されてないよ。』と。


 前回のコラムで『……注記に関してもその根拠を理解した上で、あえて省略しているのか、いないのか、さっぱりわからない。どう考えてもそんなルールあるの?と言いたくなるような考え方が跋扈しているとしか思えない……』とコメントした。


 ここで意地悪な質問!
『法律で定められているのに、お宅の会社の決算書類には記載がされていない、それって問題ないんですか?決算事務を会計事務所などに外注している場合、外注先にその根拠を確かめたことがありますか??外注先から説明を受けたことがありますか???』


 どうです?
 この質問に根拠も含めてきちんと即答できるのであれば、皆さんの会社の経理部、あるいは外注先たる会計事務所はノーマルレベルと推定できます。(即答できないケースというのは、会計のプロとして極めて恥ずかしい話といえるでしょう。)


 間接金融に生命線を握られている大多数の会社は、『年一度の経営者の主張である決算書類』でのルールに基づいた情報開示や、それによる自己主張にあまりにも無頓着。これが世の現実なら、なんと、もったいないことか!1年に1回のチャンスなのに!


 例えば、5期も6期も前の赤字の話題を取り上げて『お宅の会社、過年度の減価償却不足が○○百万円ほどあるんですよねぇ』と、金融機関の担当者に嫌みをいわれたことありませんか?(実は、定率法で償却している場合だと、かかる金融機関の認識に誤りがあるケースも多い。)
 注記事項等は、取締役等との金銭債権・債務以外にも数多く規定されている。あえて省略する理由はどこにあるのか?とりわけ会計事務所が省略する根拠は何か?金融機関とバトルを繰り広げている(!?)関与先トップの姿をみるにつけ、法律に則った援護射撃をなすべきプロたる会計事務所が、なんで?小生にはさっぱりわからない。
 商法施行規則は難しい法律ではないので是非ご一読いただきたいが、その法律に規定されている『省略の根拠』を、一応、引用しておきましょう。(傍点は筆者)


(注記等の特例)
第四十八条(1項省略)

 小株式会社及び有限会社の貸借対照表及び損益計算書については、この節の規定により記載すべき注記を省略することができる。ただし、第九十二条の差額並びに第九十三条の超過額及び純資産額の注記は、この限りでない。
 ところが、である。
 去る2月7日に『会社法施行規則』『会社計算規則』という新しい法律が産声を上げた。施行日は新・会社法施行の日。この中には今回のテーマだけでなく大きな制度変更が盛り込まれている。会社にとっても会計事務所にとっても『激変』ともよべる大変化。正直、超〜〜〜大変!次回以降解説の予定……
(つづく)



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松岡 宣明(まつおか のぶあき)
松岡宣明税理士事務所 所長
〒780-0863 高知市与力町3番4号MAビル
TEL:088(822)8660 FAX:088(822)8662
e-mail:tax007@minos.ocn.ne.jp


高知県出身、1961年生まれ。
京都大学経済学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て平成9年松岡宣明税理士事務所開業。
平成11年CFP(ファイナンシャル・プランナー上級資格)試験合格。
NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部・副支部長、高知大学人文学部・非常勤講師。

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