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第9回 「中小企業の会計に関する指針」 その2
(承前)
1999年以降、金融機関は大きく様変わりをした。風景が一変したと言っていいだろう。ところが、このような変化にあまりにも無頓着な経営者が多いのも事実。間接金融を恃む中小零細企業にとって、金融機関との取引は非常に重要であり、その大前提となる『決算』や『決算書類』は同じくきわめて重要である。色々な場をお借りして、これらの重要性を説いている小生であるが、それが遍く理解されているとは言い難い現状がある…
『会計のルール』は社会の重要なインフラストラクチャーであると思う。『世界共通語』と言っても過言でない。
漸く、我が国の中小企業にもメルクマールとなる『中小企業の会計に関する指針』が登場したことを前回解説した。この指針は『会計参与』という機関を会社に設けた場合、強制的に準拠すべきルールとして位置づけられているが、現実問題としては、『会計参与』設置会社以外の中小企業も、積極的に会計指針に準拠した計算書類を作成すべきであろう。それこそが時代の要請である。
そこで前回のコラムでごく初歩的な質問を用意した。今回はじめてこの質問に接する御仁はちょっと考えていただきたい。『我が社ならどうする?』
【質問】
会社(総資産5億円の製造業)が10年来、某上場企業の株式(取得価額3千万円)を保有しています。因みに会社が保有する某上場企業の株式の期末時価は5千万円になっています。さて、この3月の決算に際してどういう風に経理(表示も含めて)されますか?
正解の前に、予想される『解答』を二つ挙げてみよう。
(1) 何もしない。決算書には、時価が明白な上場株式なので、『有価証券』として「流動資産」に、取得原価の3千万円を計上しておく
(2) 何もしない。決算書には『投資有価証券』として、「固定資産」の投資その他の資産に、取得原価の3千万円を計上しておく
少し経理を齧った人にとっては『取得原価主義』がわが国会計制度の大前提であることは周知の事実である。従って、かかる『解答』がでてくるの無理もないのかもしれない。顧問会計事務所に確認するのもいいだろう。会計事務所がここ10年に及ぶ会計ビッグバンにどう取り組んできたのか、あるいはそうでないのかがよくわかる、と思う。実はどういう『解答』が寄せられるのか、個人的には興味津々である。(小生から見ればこれは千載一遇のチャンスであるのだが…)
あえて解説を試みれば、(1)は上場株式だから、換金がすぐ可能なので「流動資産」、(2)は上場株式だけど投資目的だから「固定資産」の投資その他の資産というところか。
いにしえの会計のルールならこれらの解答には一理あった。でもそれは遠い昔の話、平成12年4月からルールは変更されている。
そして今回の指針の公表、いよいよ中小企業の会計も待ったなしの状況だ。
正解は、期末時価つまり5千万円で、「固定資産」の『投資その他の資産』に『投資有価証券』として表示する。時価が客観的に測定できる金融商品は時価評価を行うということだ。これは【金融商品会計】の基本的な考え方である。
そして2千万円の含み益(未実現利益)については『純資産の部』と『負債の部』に二つに分けて表示する。
まず純資産の部の『評価・換算差額等』の『その他有価証券評価差額金』というところに1400万円(法定実効税率を30%と仮定)と表示し、「固定負債」に『繰延税金負債』として600万円と表示する。この600万円は【税効果会計】という別のルールから導かれる。これは【金融商品会計】に先立つ平成10 年4月から導入されている会計のルールだ。
どうだろう。小生の事務所は『中小企業の会計に関する指針』の公表と同時に、決算期が到来した関与先の計算書類に関しては順次このような会計処理に移行している。
よく『松岡さん、あんたの言うことはもっともやけど、それは、ふとい会社が守るルールで、中小企業には関係ないきねえ。』とお小言を頂戴する。
『中小企業には関係ない』という理屈で、結局、関与先の中小企業にそのしわ寄せが押しつけられる現実。今回の『中小企業の会計に関する指針』はその現実に大きな一石を投じたという意味で非常に意義深いものであると思う。
間接金融を恃む中小企業の計算書類も、今や、きちんとしたルールに基づいて作成されなければならないのでは、と思う今日この頃。
金融機関が計算書類を非常に重視しているという現実、千載一遇のチャンスの意味はここにある。
(つづく)
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松岡 宣明(まつおか のぶあき)
松岡宣明税理士事務所 所長
〒780-0863 高知市与力町3番4号MAビル
TEL:088(822)8660 FAX:088(822)8662
e-mail:tax007@minos.ocn.ne.jp
高知県出身、1961年生まれ。
京都大学経済学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て平成9年松岡宣明税理士事務所開業。
平成11年CFP(ファイナンシャル・プランナー上級資格)試験合格。
NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部・副支部長、高知大学人文学部・非常勤講師。
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