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知財時代の企業経営

第8回 「知的財産の価値評価について」

 近年、企業の保有する特許権が資金調達や信用の補完のために活用されるなど、知的財産を積極的に活用した知的資産経営が注目されています。この知的資産経営のためには、知的財産の価値評価を適切に行うことが必要です。今回は、知的財産の価値評価の概略を解説します。


1.評価における知的財産権の性質
 知的財産権には、不動産等の有形財産とは異なる下記性質があり、これらを踏まえて価値評価を行うべきと考えられます。
 先ず、知的財産権はその名の通り財産権の一種であり、その独占排他的な性質によって、現在の又は将来的な収益を生んだり、ライバル社へ脅威を与えたりする可能性があります。保有する知的財産権に基づく事業展開によって、企業価値全体が高まる場合もあります。一方で知的財産権は、無効審判等によって権利が遡及消滅する等のリスクもあります。
 また、知的財産権は無形資産の一種であり、自ら取得した知的財産権は貸借対照表には資産計上されません。知的財産の価値は財務諸表に直接的に表れない点で、土地、建物、設備等の有形資産とは区別する必要があります。


2.特許庁や日本弁理士会の取組み
 特許庁や日本弁理士会では、知的財産の価値評価に関して、下記をはじめ様々な取組みがなされてきました。最後に記載する知財価値評価推進センターには私も参加しており、現在も、知的財産価値評価に関する活動を行っています。
・平成12年…特許庁「特許評価指標(技術移転版)」公表
・平成10〜12年…日本弁理士会「特許権の価値評価手法(試案)」公表
・平成13年〜…日本弁理士会「特許権の価値評価についての調査・研究に関する報告書」提出
・平成17年…日本弁理士会「知財価値評価推進センター」設立


3.知的財産の価値評価が必要となる場面
 知的財産の価値評価が必要となる場面として、アライアンス(事業提携)、ライセンス、M&A、企業倒産時の権利売却、民事執行手続、資金調達、出願管理、職務発明対価の支払い、そして知的資産を含む会計処理といったものが挙げられます。
 特にベンチャー企業にとっては、金融機関による担保や融資審査の場面、あるいは投資家による投資判断の場面が資金調達のために重要になります。これらの場面で知的財産の価値評価を適切に行うことが大切です。
 また、上記各場面での評価目的によっても、価値評価が異なります。価値評価の際には評価目的を明確にすることが必要です。


4.評価概念の分類
 評価の概念は、定性評価と定量評価に分類されます。定性評価とは、対象権利の特性や性質を定めること、定量評価とは、対象権利の金銭的価値を数値として定めることです。
 定性評価によって、権利の有効性や事業との関連性といった権利の特性評価を行い、この定性評価を元にした定量評価によって、評価価額を具体的に数値化します。


5.3大アプローチ
 価値評価を行うための一般的手法として3大アプローチ方法があります。3大アプローチとは、権利取得費用(コスト)を評価する「コストアプローチ」、市場(マーケット)での実際の取引価額を評価する「マーケットアプローチ」、そして、権利によって発生するキャッシュフロー(インカム)を評価する「インカムアプローチ」です。
 しかしながら、知的財産権に基づく製品価値が権利取得コストとは無関係に変動する、知的財産権の客観的な流通市場が見えにくい等の理由から、知的財産価値評価の多くのケースにおいては、コストアプローチやマーケットアプローチよりも、将来の収益を考慮したインカムアプローチを主体とした評価が好ましいといわれています。


6.さいごに
 実際の評価には、権利群や商品それぞれについて詳細なスコアリングと市場分析を行い、将来のリスク(割引率)、収益増加予測、権利の寄与率などのパラメータを特定して、様々な視点から最終的な評価価額を算出します。
 適切な知的財産価値評価は、知財の活用に大きく役立ちます。知的財産時代の企業経営として、知的財産権の価値評価に着目してみてはいかがでしょうか。




知財時代の企業経営


森田 拓生(もりた たくみ)
辻本特許事務所 高知支店 弁理士


辻本特許事務所・高知支店
高知市鷹匠町1丁目3-22 スクエアフロント2階
電話:088-826-6667 FAX:088-826-6668

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