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知財時代の企業経営

第12回 「展示会発表等による新規性の喪失」

 新製品を開発したときや長年の研究成果がまとまったときには、一刻も早く展示会や学会で発表してユーザーや業界内の反応を見てみたい、というような思いが当然に出てきます。また、それが自社の将来の主力製品になる可能性を考えれば、発表の機会を通じて一人でも多くの人に知ってもらい、ビジネスチャンスにつなげたいというのは当然の願望だと思います。
 ただし発表の際には、自社の特許・実用新案・意匠の出願を検討しなければなりません。発表後、気が付くと類似品が出回っていたという事態を避けるため、発表で新規性を喪失してしまう前に出願を行なうべきです(原則:新規性喪失前の出願)。
 とはいっても実際には展示会や学会を数日後に控えていて、どうしても間に合わない場合があります。また既に発表を終えているけども、思いのほか反響が大きく、あとになって出願の必要性を感じたという場合があります。このような場合のために、新規性喪失の例外という出願人保護のための制度があります。今回は、展示会を中心にこの新規性喪失の例外について解説します。
◇原則‥新規性喪失前の出願について
 特許権は、過去に存在しなかった新たな技術について与えられるもので、新規性を喪失した発明は特許をとることができません。これが新規性喪失の原則で、まずは何よりも、発表前すなわち新規性喪失前の出願を検討すべきです。
 実用新案法、意匠法にも同様の規定があります。つまり、展示会への出品や学会の発表(多くは予稿集への掲載)、新聞・雑誌への広告の掲載等は、それぞれ新規性喪失の事由となり、その内容については原則として特許、実用新案、意匠のいずれもとれなくなってしまいます。

◇新規性喪失の例外‥6ヶ月以内 なら間に合う?
 ただし、上記原則には例外があります。新規性を喪失した発明であっても、その喪失事由が一定の条件を満たす場合には、出願人自らが所定の手続きを行うことで、その行為は無かったものとされます。その結果、新規性喪失した後の出願にも拘わらず特許(実用新案、意匠)をとることができます。これが新規性喪失の例外です。
 〈適用を受けるための条件〉
 適用を受ける喪失事由は、特許・実用新案出願か意匠出願かで異なります。具体的には以下の通りです。
 @特許・実用新案での適用条件‥出願人や発明者自らが指定展示会又は指定学会で出品又は発表したこと、或いは、出願人や発明者自らが刊行物に掲載したこと
 A意匠での適用条件‥出願人や創作者自らの行為全般(出品展示、広告掲載のほか、製造、販売、貸与、使用等)に起因して公知になったこと
 意匠の場合は、デザイン界の慣例に基づき、特許よりも条件が緩やかとなっています。例えば販売後の特許出願では絶対に無理ですが、意匠出願は例外適用を受けることができます。
 〈例外規定適用の手続き〉
 例外規定適用を受けるために以下の二つ手続きが必要です。このうち公表から6ヶ月に出願することがもっとも重要です。
@出品、発表から6ヶ月以内の出願
 出品、発表、掲載の一番最初の日から6ヶ月に特許(実案、意匠)出願します。このとき、願書へは新規性喪失の例外規定の適用に関する特記事項を追記し、発明(創作)者、出願人名は、原則として、発表者か出品社名と同一にします。
A出願後30日以内の証明書提出
出願日から30日以内に、第三者(主催者等)の証明印付きの証明書を添付して提出すること。

●注意事項
 注意事項ですが、先ず、各行為から6ヶ月以上経ってしまった場合や、発表者や展示会社名とは別の名義で出願した場合は、新規性喪失例外の規定の適用を受けることができません。
 また、これはあくまでも新規性喪失の例外であって、先願の要件(同一の2件の出願は出願日の早いほうだけが特許になるという要件)の例外では無いことに注意すべきです。公表後、自らの出願より先に他者に出願された場合には、いくら新規性喪失例外適用を受けても特許をとることができません。
 また、外国(特にヨーロッパ)へ出願するとき、適用条件が異なったり、新規性喪失の例外適用が認められなかったりします。

●展示会出品の際に
 しておくべきこと
 特に展示会出品に注目すると、新規性喪失の例外適用のために以下のことをしておくことが好ましいと思います。
・出品前の出願の検討‥前記の通り、第一に出品前の出願を検討すべきです。外国出願等の様々な制限や手数を考えると、原則通り、新規性喪失前に出願するに越したことはありません。
・指定展示会かどうかの確認‥特許出願の場合には、出品展示会が特許庁長官指定を受けたものである必要があります。長官指定の有無については、特許庁HP内の「特許法第30条等指定の博覧会」というページでも確認できます。
・主催者証明の申し込み‥規定適用手続の際には、主催者の印鑑つきの証明書が必要となります。通常は展示会開催前に、遅くとも開催後数ヶ月以内に主催者に申し込みます。
・展示写真の撮影‥自社の展示の内容が分かるように、写真を撮影します。写真は例えば、出品物、説明文がわかる近影写真、ブース名と出品社名の入った引き写真、隣接ブースや会場内位置の分かる大引き写真があればよいでしょう。また、日付がわかるようなものも好ましいです。
 なお余談ですが、このような写真を残すことは別の意味でも重要です。展示日以降に他者が出願して権利取得されてしまっても、展示写真を証拠とすれば、場合によっては自社製品を守ることも可能になるからです。

●学会発表の際にも、上記展示会出品と同様のことをすべきと思われます。展示会や学会等の発表を行なう場合には、常に特許等の出願を踏まえ、必要に応じて上記のような規定適用を検討してください。また具体的な事案に面した場合は、お気軽に弊所にご相談下さい。
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