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日本銀行高知支店 支店長 渋谷 康一郎さん(48歳)
「日本一の田舎」を目指して地域の活力を取り戻そう

「依然として回復感に乏しい」が決まり文句になってしまった高知県経済。さまざまな経済統計が景気の明るさを示し、国内では景気回復の動きが広がる中、取り残されてしまったかにみえる。しかし「高知はダイヤの原石をいくつも秘めている。それを見つけて、磨けば、まだまだ発展する土壌がある」と日本銀行高知支店の支店長、渋谷康一郎氏は話す。平成17年の支店長就任以来、経済情勢の把握のために県内をくまなく歩き、実状を肌で感じてきた2年間。
今年8月、土佐経済同友会の地域経済活性化委員長として『高知県経済活性化の方向性と活性化策に関する提言』をまとめられました。
日銀高知支店の担う役割のひとつとして、県内経済動向の把握があります。私は実際に現場を見、多くの人に話を聞くことこそが、真の現状把握につながるという考えなので、調査活動では県内の経営者や地域住民の皆さんに多くの協力をいただいています。中には話しづらいこともあるでしょうが、日銀だからということで聞かせていただけたことも多々ある。このような協力に恩返ししたいと考えていました。そこで地域へのフィードバックのひとつとして、私のこれまでの経験と新しい手法を用いた活性化の方向性の分析、委員会での議論を踏まえ、今回、土佐経済同友会として高知県経済の現状と活性化に向けた提言を発表しました。
県経済の状況は?
「依然として…」というのは事実ですが、さまざまな経済指標が厳しい割には個人消費が落ち込んでおらず、いまだ活力があるのが現在の高知の状況です。ただ、県における過去の景気回復局面というのは財政政策としての公共工事が増え、それに牽引されて経済が活性化するというパターン。しかし今後、公共事業が伸びることは考えられません。
今、全国的に景気が緩やかに回復しているのは、製造業を中心に民間企業が頑張り、さらにそれを個人消費が支えているから。高知県経済は公共支出への依存度が高い体質なので、今回の景気回復の波に乗ることができません。
このような局面を打開できるのでしょうか?
実は、高知は非常に素材に恵まれた地域。例えば観光を見れば、非常に優れたツーリズムが生まれているし、農業でいえばハウス栽培発祥の地。大学の持っている技術も高いものがある。
しかし、それらを活かしきれていない。全国区になるためにはブランド化が必要で、そのためには高品質で安定的に一定量以上を供給できるという要件を満たさなければならない。高知の場合、品質に問題はないが、それ以外が苦手なようです。さらに、マーケティングの強化がポイントになるでしょう。
高知の人にとっては当たり前のことが、都会人にとってはぜんぜん当たり前ではない。魅力的な「非日常性」の宝庫なんです。このダイヤの原石を発掘し、磨き、ニーズのある地域に向けて発信すればいい。今回の提言でも「日本一の田舎」を目指すことを第一に掲げました。
具体的にはどのような取り組みが必要でしょう?
第一に、第一次産業とその加工業である1.5次産業の振興、第二に健康サービス業の振興、第三に観光振興を推進していくことが、高知県の地域特性からみて、ふさわしいと考えます。
第一次産業を例にあげると、現在、国内の食料自給率は約4割と低迷しています。今後これが問題にならないわけがない。そこで、これまで培ってきた農業技術を活かして、高品質で生産性の高い産品を安定的に供給できるようになれば、一定レベルの所得を稼得できる。かつて、「農業では食べられない」と従事者が他次産業に流れたが、今後はそれらの人たちが戻る受け皿にもなる。
「環境にやさしい」「健康に良い」「安心・安全」「癒し」などを志向する時代です。地方にとって厳しい時代とよく言われますが、高知にとって社会状況は追い風なんです。地域住民や企業の方々がやる気になれば、必ず経済活性化の道が開けると思います。
現在、高知支店で力を入れていることは?
小中学生を対象とした「金銭教育」を強化したいと考えています。支店内に広報ルームを新設し、夏休みには小学生を対象にサマースクールを開催、日銀の役割や日本銀行券の印刷技術などについて講義を行いました。また、小学校での出前講座などにも取り組んでいます。
携帯電話やインターネットの普及によって、昔に比べて子どもですら金融トラブルに巻き込まれやすい社会情勢になっています。キャッシュレスのクレジット社会への移行によって、多重債務の増加は大きな問題になっている。さらに高知県は全国的にみて、消費意欲が高い傾向にある。これは地域経済の活力となる反面、個人の経済破綻も招きやすい。やはり、子どものころからお金や物の価値を理解し、健全な金銭感覚を磨いていくことが必要です。子どもたち、あるいは親子を対象にした講座や講演、教育者向けの金融教育プログラムの配布などを、県や県内各金融機関などを委員として構成された高知県金融広報委員会とタイアップして積極的に行っています。
熱烈な「高知ファン」とお聞きしました。
高知というのは、他県出身者にとっても非常に居心地よく感じるところなんです。人と人との距離がとても近く、懐に飛び込ませてくれるような温かさがある。だからね、私のように単身赴任できた企業の支店長の多くは、高知に「ハマッて」ます。愛される土地、なんでしょうね。私もいずれは異動になって、高知を離れることになる。でも、何らかの形で係わりを持って、高知の活性化につながるような応援をしたいと思っています。
※『高知県経済活性化の方向性と活性化策に関する提言』は、日本銀行高知支店ホームページ
(http://www3.boj.or.jp/kochi/index.html)内・公表資料、あるいは土佐経済同友会ホームページ
(http://www.tosa-te.ne.jp/~tosadoyu/)内・提言より閲覧できます。
PROFILE
渋谷 康一郎(しぶやこういちろう)
昭和34年 東京都生まれ。
昭和57年 慶應義塾大学経済学部卒業
昭和57年 日本銀行入行
平成07年 人事局調査役
平成09年 文書局調査役
平成14年 文書局管財課長
平成16年 文書局総務課長
平成17年 高知支店長
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