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再開発へ前進する中心商店街。
再開発へ前進する中心商店街。

2006年秋号掲載
高知市帯屋町からまた一つ、大型店舗が姿を消そうとしている。大橋通りの顔でもあった高知スーパー・バルザの閉店だ。相次ぐ映画館の閉館とダイエーの撤退。そして今回のバルザ。通行量の減少や地価の下落にあえぐ中心商店街に、大きな影響を与えることは間違いない。
特に、ダイエーとバルザという2つの核店舗を失った帯屋町二丁目商店街は深刻といっていいだろう。
そんな中、9月7日、旧ダイエーショッパーズ高知店周辺を中心とした高知市帯屋町二丁目の再開発に関する学習会が高知商工会館で開催された。再開発を推進していく上でのコンセンサスを形成していくことがこの会の狙い。主催は高知TMO事業推進委員会(広末幸彦委員長)。地権者や商店主ら約50人が参加した。
会では、都市計画コンサルタントなどの専門家による再開発事業に関する説明や全国の事例についてのビデオ上映が行われ、参加者は、再開発による財産の権利変換の仕組みや、補助金制度を利用した資金作り、都市開発法に基づいた事業推進の方法などについて理解を深めた。
同委員会では今後5回にわたって毎月1回の学習会を予定しており、アンケートや意見交換会も行うことにしている。
強い逆風の中、小さな一歩を踏み出した帯屋町二丁目商店街再開発計画。学習会の内容から、その必要性と可能性についてレポートする。
すでに経営存続ぎりぎり
「商店街は経営存続できるぎりぎりのところまで来ている」と広末氏は言う。ダイエー撤退に続くバルザの閉店は、確実に商店街の活気を奪ってゆく。既にシャッターの降りてしまった店舗もある上、一時は下げ止まりかと思われた通行量や地価も年々落ち込み続けている。
帯屋町二丁目商店街では一昨年、ダイエー撤退を受けて帯屋町二丁目再開発協議会を発足。独自の再開発構想を策定し、これまでに地権者や商店主をはじめ、市民、行政担当者らへの問題提起を行ってきた。
そして昨年度までに行ってきたこれらの活動を今年度につなぎ、推進していくため、再開発コンセンサス形成事業として一連の学習会を実施することとした。
また、これまで追手前小学校を含む二丁目の北側ブロックの地権者・商店主を対象としてきたものを、通りの南側と中の橋、大橋通り、バルザ、ひろめ市場まで広げてコンセンサスを取っていく考えだ。
「まずは危機感を共有して、できることからやっていく。個店ごとの改革も必要だが、ブロックごとの改革も必要だ。5回の学習会を通じて、なんとか活性化につなげていきたい」と広末氏。
向かう先についての思いはそれぞれ違っていても、まずは「活性化を目指そう」という足並みがそろわなければ前進はないようだ。
再開発はなぜ必要か
当日司会進行を務めたのは、帯屋町二丁目再開発協議会で再開発を支援している大原計画事務所代表の大原泰輔氏。「再開発は、国・自治体の役割として、市の財政にとっても絶対に必要」と大原氏は言う。
再開発とは、いわば暮らしの場を新しく作り直すということ。国や自治体には「その地に住まう人たちの命の安全」、そして「市民の財産を保全し、その価値を高める」、「より良い暮らしの場を実現」を進めていく責任がある。
南海大地震を前に、果たしてこの街は安全だろうか。最も広い敷地を持つ追手前小学校の校舎は昭和30年代に建てられたもので、中にはそれ以前に建てられた箇所もある。子供たちを通わせる学校として安全とは言い難い。また津波の問題もある。より安全な街にしていこうというのも、再開発の根底にある大きな目的だと大原氏は言う。
また、「都心商業の活性化は、市の財政支援にもつながるもの」とも。ダイエー、バルザ、2つの大きな核店舗が姿を消すことで商業活動が低下すれば、市街地の土地や建物の資産価値も低落する。資産価値に比例して固定資産税も増減するため、財政収入のほぼ3割を市民の固定資産税でまかなう高知市にとっても大きな問題となるはずだと指摘する。
独自の構想を策定し、広く理解を図る
ダイエー跡地周辺の再開発については、協同組合帯屋町筋が平成17年度に独自の構想を策定しており、その概要についても大原氏から説明があった。
前提となったのは、追手前小学校を生かすということ。再開発地区北側のほとんどの区画を占める小学校を3階まで持ち上げて人工のグラウンドを造成。その下階にダイエーに負けない魅力ある核店舗を導入する。また高齢化していく高知都心部にふさわしい高齢者サービスを担う施設、そして多くの人々を都心居住させるための分譲住宅、高知市民図書館の入居、さらにはひろめ市場をホテルにといった構想だ。事業費概算は260億円。
「帯屋町筋の商店経営者の立場から、あくまでこういう街ができればいいなという、一方的な願いをまとめたもの。260億円という金額に目を奪われがちですが、これは小学校の建て替えや隣接地のホテル建設を含んだもの。それ以外についても分譲による回収が確実に行われるもので、商業地の開発のみで算出した費用ではありません」(大原氏)。
組合ではこのプランをたたき台に、生活者や、県・市の行政の代表を集め、昨年一年間で全7回の協議会を行っている。会ではやはり、事業費の大きさに実現性の低さを訴え、否定的な発言が多かったという。しかし、こうした問題提起が生活者や行政関係者を巻き込んで、再開発が商店街だけでなく、市民のためのものであることという気運が生まれていくに違いない。
事実、協議会において「自分たちの暮らしに密接に結びついている商店街を、もっと盛り上げていきたい」という市民の声に組合側も大きく励まされたという。 しかし、その実現性を考えていく中で、商業施設の上への小学校立地は困難という文部科学省の見解や、学校、高齢者施設、図書館を入れることで期待される高知市主導の都市開発の可能性の消滅など、不安要素が明確化した一年でもあったとのことだ。
今後開催される学習会は、こうした構想の推進を図りながらも、新たな着地点や再開発の手法を模索していく場にもなっていくと考えられる。
街づくりの主人公は、街に暮らす人々
「再開発の手法は一様ではないし、現在打ち出している構想ありきとは考えていない。いわゆるハコモノをやろうということではない。再開発の手法は様々あり、それらの手法を組み合わせて新しい街を形づくっていくことが自分たちの手にゆだねられている。まずは我々が『再開発の当事者である』という自覚を持ち、危機感を共有しなければならない」と広末氏は言う。
まずは身の丈に合った取り組み、できる範囲でできることからやる。しかしそれには、ある程度核になる成功例が必要であり、その可能性を考えるための再開発構想であり、コンセンサス形成事業であるという考え方だ。
成功例を作った上で各個店に飛び火し、やがて商店街全体に広がって、息を吹き返していく。その成功例づくりを目指す一歩となれるか、大きな期待が寄せられている。
高知市出身で、西日本を中心に各地で商店街の再開発事業を手掛け、協議会にも参加する都市未来企画の田村実社長は言う。「全国的に商店街の状況は厳しい。しかし私の見る限りでは、帯屋町というのは西日本でも一番元気な商店街。郊外の大型店も『商店街が負けるはずがない』と考えています。商店街の方が魅力的だと彼らは思っている。逆に、あれほど通行量がある商店街が、なぜ自分たちを目の敵にするのかと疑問視しています」。
ファミリー層という一定の層しか狙っていない郊外の大型店は、利便性を追求していく中で画一化し、全国どこへ行っても同じ価値しか提供していない。一方商店街は、その場所にしかない魅力がある。しかし、駐車場や商品供給力、サービス力など、大型店に及ばない部分も多い。それを補うことも再開発の重要なポイントだ。
「バルザの跡地であればすぐに後継者も出てくるでしょう。しかし、入れば安心というものではないということを商店街としては考えなければなりません。生活者は非常にシビアになっています。専門性、特化性が必要。お客様に合わせて商店街の姿も変わっていかなければならないという視点で、再開発を考えるべきなのではないでしょうか」(田村氏)。
最後に田村氏は、何が何でも再開発しなければならないということではなく、ソフト面で一店一店見つめなおしていけば、商店街がやるべきことが見えてくる。ハコモノを作ることをきっかけに商店街の方が変わっていければ、もっともっとポテンシャルの高い街になっていくはずだと締めくくった。
ダイエー撤退の後、県庁、市役所とともに中心地の公共サービスの一端を担っていた高知市民病院も、高知医療センターとして高知市池へと移転した。もうすぐバルザも姿を消す。そんな中で、高知女子大学の移転問題も持ち上がっている。こうした行政の動きに対して、都心居住、コンパクトシティを目指そうという世の流れに逆行しているとの指摘もある。
行政の利益でもなく、まして地権者や商店主のみの利益ではなく、市民の立場に立った街づくりこそが求められている。
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