第93回:オリンピックのメダリストがもらう賞金

今年の2月の平昌オリンピックでは、日本選手団は、金メダルが4個、銀メダルが5個、そして銅メダルが4個と合計13個のメダルを獲得して冬季では長野大会の10個を超える大躍進となった。

 

又、それぞれのメダリストに対して、公益財団法人日本オリンピック委員会(以下JOC)や選手達が所属している競技団体、あるいは選手が所属している企業からの報奨金が支給されるというニュースが、連日マスコミを賑わしたのも記憶に新しいところである。

 

さて、ここで質問!
『メダリストがもらう報奨金って、税金はどうなるのでしょうか?』

 

因みにマスコミで報道されている情報を抜粋してみると以下の様になっている。(朝日新聞web、AERA webなどから抜粋したもの)

 

高木菜那選手:2,000万円(JOCと(公財)日本スケート連盟から各々1,000万円ずつ)
高木美帆選手:1,600万円(同800万円ずつ)
小平奈緒選手:1,400万円(同700万円ずつ)
羽生結弦選手:1,000万円(同500万円ずつ)
等々

 

JOCはメダリストに対して金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円の報奨金を支払うことに決めている。従って、高木菜那選手は金メダル2個だからJOCから1,000万円報奨金が支給されるわけである。更に所属する日本スケート連盟から同額の報奨金が支給されるようだ。又、報道によると高木菜那選手には所属企業グループから報奨金が4,000万円支給されるとも言われている。つまり総額で6,000万円というビッグボーナスとなり、なんとも羨ましい限りではある。

 

それぞれの金額が多いか少ないかは別にして、『税金』はどうなるんだろう?
基本的に選手個人がもらうことになるから所得税の世界の話となる。
所得税は所得(あっさり言うと「儲け」)を10種類(例えば給与所得とか事業所得等々)に分類して、それぞれの所得に応じて計算方法を定義している。

で、今回のオリンピックの賞金は所得税法上では「一時所得」(所得税法34条)に該当するケースが一般的である。尤も、今回の高木菜那選手に支給される所属企業グループからの報奨金については、ボーナスであれば「給与所得」(所得税法28条)に該当すると思われるが、最終的にはどのように支給されるか?で課税関係がかわってくる。(所得税法は結構ややこしい!)

 

(一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。(以下省略)

 

一時所得の金額は次の算式で計算される。
総収入金額−収入を得るために支出した金額−特別控除額(最高50万円)
で、税額を計算するときにこの一時所得の金額の1/2に相当する金額を総合課税の所得(例えば給与所得や事業所得など)と合算、課税されることになる。つまり我が国の所得税法は超過累進課税制度を導入しているから一時所得が多ければ多いほど所得税負担が大きくなる計算構造を導入しているのである。

 

えっ!オリンピックで頑張ってメダルとったのに、その報奨金には所得税が課税されるなんて、なんて酷な!

 

所得税法第9条という条文がある。

 

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十四 オリンピック競技大会又はパラリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会、財団法人日本障害者スポーツ協会その他これらの法人に加盟している団体であって政令で定めるものから交付される金品で財務大臣が指定するもの

 

この報奨金にかかる所得は「非課税」となって、一定限度額までは所得税は課税されないことになっている。平成22年の財務省告示第102号によれば、JOCの規定により支払われる金品と、JOC加盟団体から支払われる金品のうち一定額まで(金メダル300万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円)は非課税とされている。

 

つまりJOCからのメダル報奨金は非課税、JOC加盟団体からのメダル報奨金は金メダルなら300万円までが非課税となり、それを超える報奨金や、それ以外の所属企業などから支給される報奨金には課税されるという結論になる。

 

所得税法の非課税、実は結構奥が深い。

【質問】ノーベル賞の賞金って、所得税かかるのかしら?

 

(続く)

[2018年5月8日掲載]

松岡 宣明
松岡宣明税理士事務所 所長
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高知県出身、1961年生まれ。
土佐高校から京都大学経済学部へ。卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)を経て、平成8年税理士試験合格、平成9年松岡宣明税理士事務所開業。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会高知支部所属、高知大学人文社会科学部・地域協働学部の非常勤講師。
https://www.facebook.com/Matsuoka.tax007



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