第6回:中小企業における戦略的財務体制の構築

 今日、中小企業のおかれている経営環境はこれまでにない過酷なものとなっている。発展途上国の台頭やエネルギー資源・レア資源・安価な人的資源争奪戦等海外の諸問題や、人口の減少化・高齢化等国内の諸問題など、状況は国内外で急速に激化するものと予想される。中小企業にとって、今後の環境の変化は予想し難くまた対応もし難いものとなり、ますます厳しくなることは必至である。困難であるが中小企業といえども今後のグローバルな経営環境を予想し対応しなければならない。

 

タイムリーな計数とは?〜月次決算の必要性〜
 そのための準備として、まず自社の現状を正確かつタイムリーに認識しなければならない。自社の現状を認識するには、現場と計数の両面から捉える必要がある。販売活動や製造活動など現場での行動が、自社の計数に漏れることなく、かつタイムリーに反映されているか。例えばある顧客に対し営業活動を行い、売上目標を達成することができたとしよう。確かにターゲットとする顧客の売上高は目標額を達成した。だが自社全体の利益はどうだろう?営業活動の中で売上を重視し適正な利益が確保できただろうか?営業コストは適正であっただろうか?さらには他の販売機会を逃してはいないだろうか?現場で活動したことが、自社に貢献したかどうかは全体の計数を見ないと判断がつかない。
 では、漏れなくタイムリーな計数とは、何か?それは月次決算書である。(月次決算は前回の「会計で会社を強くする」の中でその必要性や作成について記載されているので詳しくはそちらを参照してほしい。)
 現場での活動が月次決算書にどう反映されているか認識することは、経営者の意思決定にとって重要なことだ。月次決算書をタイムリーに把握することは戦略的財務(会計)体制の構築のひとつである。戦略的財務体制の構築は、今後厳しい経営環境を生き抜くためには欠かせないものとなる。

 

戦略的財務とは?〜管理会計の導入〜
 現場での経営活動が財務計数に反映され、また財務計数から現場の現状や諸問題を認識することが可能である。
 そして戦略的財務のツールとして管理会計の導入が不可欠となる。通常の決算書は制度会計と呼ばれるもので、報告を目的とし、株主等の利害関係者のために作成されるものだ。一方、管理会計は経営者の業績管理をサポートすることを目的とし、経営者のための計算書だと言える。管理会計には変動損益計算書と呼ばれる通常のものとは異なる計算書を活用する。

 

変動損益計算書とは?〜内外部の問題点を把握〜
 変動損益計算書とは、通常の損益計算の原価及び費用を「変動費」と「固定費」の2つに区分して表示するものだ。業績管理に活用でき「財務からの現状認識」「短期戦略」「即効性のある戦略」において有効と考えられている。

 

 まず、売上高から変動費を引くと限界利益が表示される(売上高−変動費=限界利益)。限界利益は市場(外部)での評価指数である。例えば売上高が前年対比で同様であり、限界利益が前年対比で増加しているのであれば、限界利益率が向上されたことが指摘される。限界利益率の向上は自社の商品が市場(外部)で評価されたこととなる。つまり限界利益(率)の増減により市場で自社が必要とされているかどうか認識することができる。
 さらに、限界利益から固定費を引くと経常利益が表示される(限界利益―固定費=経常利益)。限界利益と固定費の関係は自社に内在する問題である。例えば限界利益が前年対比で同様であり、経常利益が前年対比で減少しているのであれば、固定費の管理不足が指摘される。これにより「自社において無駄遣いがあったのではないか?」という認識ができる。
 戦略的に財務計数の認識が毎月できれば、問題点は遅れることなく明らかになる。問題点が明確になると、市場(外部)と自社(内部)を分けて改善策(打ち手)を講じることができる。つまり改善策(打ち手)は、「売上の拡大」「限界利益率の向上」「固定費の削減」の3要素の中にある。これら3要素のひとつあるいは複数を改善することで経常利益は向上される。

 

 マーケティングを活用し自社の販売力を向上させることは中小企業においても不可欠となっており、非常に重要なことと認識頂いている。加えて戦略的財務体制の構築も、これからの中小企業経営に求められていることだ。ぜひ管理会計の手法を導入し自社の現状認識と問題点の解決を実践できるよう努めて頂きたい。

 

中嶋 司(ナカジマ ツカサ)
株式会社P.D.C.A.マネジメント 代表取締役
中嶋司税理士事務所 所長
http://www.tkcnf.com/nakajima
メール:nakajima_tsukasa@tkcnf.or.jp

Profile:
1962年高知県南国市出身
大学で経済学を専攻。大学院修士課程を修了後、30歳で税理士試験合格と共に高知市に税理士事務所を開業。現在は各種セミナー講師、経営再生支援、税務相談等の活動を行っている。2008年より高知商工会議所地域力連携拠点応援コーディネーターを務める。


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