第17回:商標の類似・非類似(要部と外観・称呼・観念をみる)

 商標法は、商品や役務の出所の混同を防止することにより、流通秩序の維持を図ることを目的としています(商標法第1条)。
 したがって、商標実務のいろんな局面において、出所混同の有無、すなわち、対比する商標が類似するか否かを判断することは非常に重要です。
 例えば、新発売の商品や役務(サービス)のネーミングが使えるかどうかは、他人の商標と出所混同を生ずるか否か、言い換えれば、他人の登録商標と同じか似ているかによります。また、商標登録の出願をしても、審査官から他人の商標を引用して拒絶理由が通知された場合や商標権侵害が成立するか否かを判断する場合に、他人の商標と似ているか似ていないかを考えて出所混同の是非を検討し対処することになります。

 

 

A.外観・称呼・観念(「商標審査基準」より)
商標の類否は、外観、称呼、観念の3要素を考慮して判断します。

(a)外観類似
 対比される商標の外形(見た目)が紛らわしいと類似です。例としては、「ライオン」と「テイオン」、「SONY」と「SOMY」です。
(b)称呼類似
 対比される商標の呼び名(聞いた感じ)が紛らわしいと類似です。例としては、「NHK」と「MHK」、「クリスティーヌ」と「クリスチーヌ」です。
(c)観念類似
 対比される商標の意味が紛らわしいと類似です。例としては、「ライオン」と「獅子」、「スター」と「星」です。
 外観、称呼、観念の3要素を総合的に判断しますが、原則として一つの要素でも類似すれば、商標は類似と判断されます。そして、3要素がすべて異なれば、商標は非類似です。

 

 

B.類否判断の基準
(a)商品・役務が同一又は類似であることが前提
 商標は商品や役務に使用するものであり、原則として、商品・役務の同一又は類似の範囲内で出所の混同が生じます(ただし、著名商標は例外)。
 例えば、「化粧品」と「化粧用具」は非類似商品ですから、「化粧品」に使用される商標と「化粧用具」に使用される商標が、仮に同一又は類似であっても、原則として両者間には商品の出所混同は生じないと解されています。
(b)取引者、需要者の通常の注意力が基準
 例えば、「薔薇」と「ローズ」は観念類似ですが、「椿」と「カメリヤ」は観念非類似です。これは「椿」と「カメリヤ」の観念が類似するとは一般需要者は認識し得ないという判断です。
(c)時と場所を異にして観察する離隔観察
 需要者は過去に購入した商品や、広告・宣伝で知った記憶を手掛かりに商品を購入することが多いことから、離隔観察によっても判断します。
(d)全体観察に要部観察を併用
 商標は構成全体として出所表示機能を発揮することから、全体観察が原則です。また同時に、商標は自他商品・役務の識別機能が本質的な機能ですから、要部(識別力を有する部分)の観察も重要です。
 例えば、商標「菊正宗」と「桜正宗」(商品「清酒」)の場合、「正宗」が慣用商標であることから、要部は「菊」「桜」となります。
(e)結合商標では、分離観察も重要
 2語以上を結合した結合商標の場合、要部となり得る部分を分離して観察します。例えば、商標「男山富士」は、「男山」が慣用商標ですから、要部である「富士」と他の商標の類否も判断します。

 

 

C.注目すべき小僧寿し判決《平成6年(オ)第1102号:最高裁H9.3.11》
 この判決では、商標「小僧寿し」と商標「小僧」は出所混同の生じない非類似商標であると判断しました。従来の考え方では、「小僧寿し」の「寿し」は指定商品の普通名称であることから、商標の要部とならず、したがって、要部である前部の「小僧」を分離観察して、商標「小僧」と類似すると解するのが通例でした。この事件は、一方が著名商標であり、他方が無名かつほとんど不使用の商標であるという特異な事例ですが、商標の類否判断を考察していく上で注目すべき判決です。

弁理士 神吉 出
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