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ネッツトヨタ南国株式会社 人材開発室室長

大原 光秦さん(41歳)

 経済統計が景気の明るさを示す一方、相変わらず回復の兆しが見えない県経済。
 それを象徴する問題が、人材の県外流出だ。平成18年度に就職を決めた県内高校生のうち、実に48%が県外企業への就職を決めている。この流れは今後も続く見通しだ。
 若き人材の流出に歯止めをかけるにはどうすればいいのか。リクルーティングに力を入れるネッツトヨタ南国で、人材開発室責任者として人材採用に携わってきた大原光秦さんに、高知の抱える問題点について話を聞いた。大原氏は現在、県内外の企業や学校組織の経営支援活動の傍ら、顧客満足・従業員満足を重視した経営を支援する「高知県経営品質協議会」で指定講師を務めたり、県内企業の採用担当者が集まって学生の就職活動を支援する「JOB CLUB」のプロデュースをしたりと、広範で活躍している。

ご自身の入社の経緯を教えてください。
 県外大学に進学していましたが、卒業後は高知に戻って地域の発展に貢献するような仕事に就きたいと考えていました。当時採用に携わっていた社長の横田英毅(現・会長)から「勉強がてら会社訪問に来ないか」と電話がかかってきたのがすべての始まりでした。カーディーラーは就職先としてまったく考えていませんでしたが、話を聞いてみると共感するところが多い。何度となく会社訪問を繰り返し、「ここで自分のキャリアを磨こう」と決断して入社しました。
以来、人材採用と能力開発に携わっていらっしゃいますね。
 入社と同時に新卒採用を統括するリクルート室(現・人材開発室)に配属されました。配属とはいってもスタッフは私だけです。上司もいません。それまで経営トップの横田自ら担当していた仕事ですから部署というものでもなく、営業スタッフに囲まれた小さなデスクと、「自分で考えて好きなようにやっていい」という自由裁量権を受け継ぎました。
 1989年当時は日本がバブル絶頂に向かっていく時代でしたから、各社の採用活動は混迷していました。地方中小企業のカーディーラーに関心を持つ学生は多くありません。学生プロジェクトでよさこいチームをプロデュースするテレビ番組を制作するなど自由裁量権を乱用してみましたが(笑)、イメージするほどの成果は得られない。入社前のイメージにギャップが生じることも少なくありませんでした。
 そこで方向転換し、学生へのRJP(Realistic Job Preview:就職前に現実的な仕事の理解を支援する)を徹底することにしました。会社としての成熟度もまだまだの時期でしたので苦労するところもありましたが、面談や体験入社に時間をかけることでマッチングが高まり、「こんな会社にしていこう」と志を共有できる仲間を迎え入れることが徐々にできるようになってきました。
2002年受賞の日本経営品質賞にも、責任者として関わられています。
 1999年にトヨタ自動車が始めた系列販売会社約300社の顧客満足度(以下CS)調査で当社が全国トップのCSだということがわかりました(現在まで8年連続1位の記録)。私が入社する以前から、CSというよりも社員のやりがいを大切にしているような会社でしたから、少し不思議な感じがしたことを記憶しています。また、当時はすでにバブル景気も崩壊し、自動車販売面で思うような結果がでない時代にも入っていましたので、CSとES(社員満足)、業績の相関に整合性がつかないジレンマを感じていた時期でした。ちょうどその頃に出合ったのが社会経済生産性本部の提案していた経営品質向上プログラムです。
 日本経営品質賞は、社員重視、顧客本位、社会との調和、独自能力という4つの基本理念から卓越した経営を追求していく考え方に立ちます。アセスメント基準書に目を通すと、当社が追い求めてきた理念と重なるところが次々に出てきて、「この考え方を理解して現場が対話を行っていけば、組織の進化が加速するかもしれない」と思いました。
 1年目(2001年)は自分自身の勉強を目的にして取り組みました。2年目(2002年)で社員全体の関心を引き出して、3年目(2003年)に賞をいただこう、と勝手なシナリオを組んでいたのですが、想定外だったことに1年早く賞をいただくことになってしまいました。ありがたい話ではありましたが、横田と「今年は受賞を辞退しようか」などと真顔で話したことでした。
最近では、社外での活動も多いと聞きます。
 現在、人材開発室は研修生(学校教員・教頭)を含め5名の体制となっています。最近では講演活動やコンサルテーション、研修会など社外にサービスを提供する仕事を増やし、全国で活躍されているコンサルタントや経営者、志をもった方々と交流する機会を作っています。高知県内でも企業や学校を対象にした研修を受け持っていますが、県外の先進事例から学びを得て、どんどん高知に還元していこうという発想です。
 また、活動を通じてネッツトヨタ南国を地域の皆さんに認知していただくことにもつながりますので、自動車販売事業と地域貢献活動とがいい循環になってきている実感があります。
高知県の人材流出について、どのように考えますか。

 当社では経営理念の中で「全社員を人生の勝利者にする」と掲げています。この約束は高知県全体がよくならなければ実現できません。自分たちを生んでくれた親はもちろん、育ててくれた地域の皆さんがいい生き方ができることも条件となってきます。
 人間の成り立ちから考えると、新しい世代の人間がさらに住みやすい地域社会を創り出し、バトンを次々と渡していく、これが基本的な進化(生き残り)の仕組みです。親はわが子に未来を託すために生き、子は親に感謝して地域で一生懸命に働くということです。
 わかっているはずなのに、学校も親も若い子供たちが県外に出ることを勧める。「自分の人生なんだから好きなように生きるといいよ」と物質的な条件だけが整った都市部で生活させることを厭わない。最終的には自由に決めることとはいえ、「生まれた地域で生きる」こと、「次代の人間が生きていく地域の未来を創る」ことだという基本的な立ち位置をもう一度考え直さなければ、先日報道されたような県人口の大幅減は現実のものになってしまうでしょうね。

学生に伝えたいことはありますか。

 私は、仕事とは人生そのものだと考えます。働く姿勢を見れば、その人の生き方が投影されていることがわかります。まず真剣に探求してほしいのが、「何のために働くのか?」ということ。経済的自立のためにとか、成長のためにと答える学生は大勢いますが、その答えにも、何のためにお金がいるのか、何のために成長するのか、というさらに上の目的があるはずです。
 将来に向かってどう生きていきたいのかを聞くと、多くの学生が「平凡であろうとも自分らしく、幸せに生きたい」と答えます。よい答えですが、それを実現するために、若くて力のみなぎっている「今」を平凡に生きていては辿り着けない未来です。無理をしたくない、自由にやっていたいということは「自分らしさ」とは関係ありません。夢、目的を具体的に描き、そこに近づくための目標を定めて努力し、自らの人生を切り拓いていく姿に「自分らしさ」が宿り、その先に初めて「平凡な幸せ」を獲得できるのではないでしょうか。うまく夢が描けないならば、人間のあたりまえの姿として、「親や地域にご恩返しすること」と考えればよいでしょう。

今後の目標を。

 大人も子どもも産学官も隔てなく、学び合いたい人が自由に集うことができる「学び場」を作ることです。産業界、教育界、行政などと関わる場面が増えていますが、似て異なることをみんながバラバラに一生懸命やっている感じがします。たとえば高知県という地域をひとつの組織、有機的につながりあった社会システムとして考えたうえで全体最適をイメージする。そのひとつの組織の経営シナリオとして、県立高校の進路指導はどうあるべきか、地域の大学はどうしていくのか、人材の受け皿として企業は何に取り組むべきかなど、長期短期の具体的な取り組みを話し合い、決めていく。
 自信を持つことを諦めた若い人たちが多いこの時代、信じられる大人と出会う機会をつくることが大切です。素晴らしい未来を共に描いていくことができるような「学び場」が必要とされているのではないでしょうか?

大原 光秦(おおはら こうしん)

 

1965年 高知県生まれ
1989年 関西大学法学部卒業
1989年 トヨタビスタ高知(株)(現・ネッツトヨタ南国)入社。リクルート室 配属
2001年 日本経営品質賞アセスメント推進責任者、人材開発室 室長
2002年 ネッツトヨタ南国 マネジメントリーダー
2006年 他組織における経営進化・人材育成コンサルティングサービスを開始



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