新聞読み方講座
第15回言論の自由と阪神支局襲撃事件
言論の自由と阪神支局襲撃事件

過激派組織「イスラム国」などによるテロが国際的な問題になっています。フランスでは、新聞社に対するテロが言論の自由を踏みにじるものだとして、国民的な抗議行動につながりました。


朝日新聞社では、1987年5月3日の憲法記念日の夜、兵庫県西宮市にある阪神支局に散弾銃を持った目出し帽姿の男が侵入し、入社6年目で当時29歳だった小尻知博記者を射殺、別の記者に重傷を負わせ逃走しました。

その後も、朝日新聞名古屋本社寮が襲われ、東京本社に銃撃痕が確認されました。静岡支局の爆破未遂事件などもあり、捜査当局は一連の事件は「赤報隊」と名乗る者による連続犯行(警察庁広域重要指定116号)と断定しました。しかし、すべての事件は2003年までに時効となり、捜査は終結しました。

事件は、「気に入らない主義・主張は言葉ではなく銃をもって黙らせる」という、民主主義社会の成り立ちを否定する考え方が根底にあります。弊社はその後もこの問題に関する取材や、事件をきっかけに始まった連載企画などを続けています。身近な暮らしの中に言論に対する「圧力」はないか、私たちメディア自身のあり方も考えながら、社会が自由に語り合える世の中であり続けるにはどうすればよいのかを問い続けています。

高知総局 外園

阪神支局の3階には、事件の資料を集めた「資料室」があります。亡くなった小尻記者が事件当日着ていたブルゾン、体内で炸裂した無数の散弾が映っているレントゲン写真、弾があたって変形したペンなどが展示されています。2006年の支局建て替えの際、事件を語り継ぐ決意を込めて作られました。事前に連絡すれば、一般の方も見学することができます。

弊社では、入社した新人記者は研修の一環として阪神支局を訪れ、言論の自由の大切さについて考える機会にしています。

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